ルクミー みらい保育スクール 保育ドキュメンテーション事例
ドキュメンテーションへのマイナスイメージを研修で払拭。作り続ければ保育者にも子どもにも変化が生まれる
2022年04月22日
ルクミーが主催する保育施設向け実践型オンライン研修「ルクミー みらい保育スクール」では、園・施設の課題解決や保育の質向上を目指す先生方を、さまざまな研修プログラムでサポートしています。
そのひとつである、往還型「ドキュメンテーション活用」コース(*)に参加されたのが、まがた保育園の今村先生です。
ドキュメンテーションを園に取り入れたばかりの頃は、「続けられるのか不安」「時間がかかって大変」と、ドキュメンテーションに対してマイナスイメージが大きかったといいます。
「今はドキュメンテーション作りも遊びを考えることも楽しい」と話す今村先生に、楽しめるようになった経緯や現在のドキュメンテーション活用法をうかがいました。
*「ルクミー みらい保育スクール 『ドキュメンテーション活用』コース」とは、グループワークで写真を使った振り返りを行う全4回の研修プログラムです。
研修を受けて実践することがドキュメンテーションを楽しむカギ
園長先生から「ドキュメンテーションを研究してほしい」と言われて、取り組み始めたばかりの頃は「とりあえず写真を撮っている」状態だったと思います。
私自身も、日々「これをしなければならない」「こういうことをさせなければならない」と準備に追われ、ドキュメンテーションを楽しむ余白がありませんでした。
しかし研修を受け、「手元を撮ってみるといいよ」「後ろ姿も物語るものがあるよ」などとアドバイスをいただいて実践してみたところ、今までと違う雰囲気の写真が撮れることに気づいたんです。
ドキュメンテーションを作って他の職員と見返したり語り合いをするうちに、私の視点も少しずつ変わっていきました。
具体的には、「やっていること」ではなく、子どもの表情や動き、思いが伝わるような写真を撮ることに重点を置くようになったんです。
写真の読み取りを始めてからは、子どもたちの姿がよく見えるようになりました。
また、ドキュメンテーションを作るようになった昨年度から、職員同士で写真を介した会話が増えたり、子どもの育ちに関して一歩踏み込んだ話をするようになりました。
これが研修で話されていた「対話の質」の変化なのだと実感しています。
研修参加前に、ドキュメンテーションに関する本を読んで勉強していたのですが、研修を受けたことで「実践する」ことがいかに大切かを学びました。
本で読んで理解していたつもりだったことも、研修によって理解が深まったように感じます。
今は、ドキュメンテーション作成に苦手意識のある職員にパソコンの使い方や作り方などを地道に教えながら、ドキュメンテーションに対する職員間の温度差をなくしていこうと取り組んでいるところです。
発行頻度に個人差はあるものの、みんな慣れてきて発行回数が増えてきています。
ドキュメンテーション作成の負担感は10から0へ、作る楽しさは0から10になりました。
全クラスで週1回以上発行。「記念写真」から「育ちの見える写真」へ
研修に参加する前は、イベントがあるタイミングでドキュメンテーションを作成していたため、発行頻度は2〜3ヶ月に1回程度でした。
しかし今は、週に1回は必ずドキュメンテーションを作って発行するようにしています。
職員によって発行頻度に差はありますが、多いときだと週に5日、平均すると週3日程度は発行しているのではないでしょうか。
ノルマは決めておらず、誰かに咎められることもないので、ドキュメンテーションに慣れていない職員も無理なく作成できていると思います。
以前は1時間ほどかけていた作成時間も徐々に短くなり、早ければ15〜20分で作れるようになっています。
苦手な先生だと30分以上かかることもありますが、以前よりは早くなってきているはずです。
私の場合、子どもたちが遊んでいる姿を見ながらドキュメンテーションのイメージを考えられるようになってきました。
他の先生が褒めてくれたり子どもたちが楽しみにしてくれたりすることで、ドキュメンテーション作成がますます楽しくなってきたと感じます。
他のクラスのドキュメンテーションも見ることができるよう、作成したものはすべて事務室の掲示板に貼り出しています。
最近は日誌にもドキュメンテーションを活用し、ドキュメンテーションを作った日は、日誌の「活動」部分を空欄にしておき、その代わりにドキュメンテーションをセットでファイリングし、時間短縮を図っているところです。
保護者の方への発信も、月1回のクラスだよりと連絡帳から、ドキュメンテーションへと移行しています。
クラスだよりを廃止したうえ、連絡帳を書く回数・量を減らして、その分の時間をドキュメンテーション作成に充てているんです。
ドキュメンテーションで子どもたちの遊びや職員の語り合いも変化
ドキュメンテーションを活用するようになって、子どもたちにも変化がありました。
たとえば私のクラスの子どもたちは、もともと控えめで、自分から遊びを提案するようなことは少なかったんです。
しかしドキュメンテーションを活用し始めてからは、私の視点が変わって遊びも変わっていったことにより、子どもたちが自ら遊びを考えるようになりました。
こちらから広がる仕掛けを作れば、遊びもどんどん広がって行きます。
人気ドラマのごっこ遊びをするために道具を手作りしたり、宇宙が好きな子は天体望遠鏡と惑星を作ったり。
もともと行事も子ども主体で作るような園でしたが、ドキュメンテーションによってその傾向が強くなったと感じます。
先生たちの語り合いや、保育の環境づくりも変わってきました。
事務室に各クラスのドキュメンテーションを貼り出しているため、それを見ながら先生同士で作り方を聞いたり話をしたりするようになっています。
今まで、クラス内の先生同士で語り合うことはありましたが、研修後はクラスを越えた語り合いが増えてきている印象です。
子どもが遊んでいる様子を見て「どうしてこのような行動をするのだろう?」という疑問を語り合うこともあります。
環境づくりに関しても、今までは年齢に合わせたものを用意していただけだったものが、「今の子どもに合った環境づくり」を意識するように変わってきました。
ドキュメンテーションに対する保護者の方の反応は、今のところポジティブなものばかりです。
最初は「連絡帳の記入が減ります」とだけ伝えて、いきなりドキュメンテーションを配布しはじめたのですが、園だよりで園長先生からの説明があったことで、特にご不満もなく理解していただいている様子です。
「子どもの発達を見ることができる」「子どもの楽しそうな様子が見られて面白い」という声も聞いています。
楽しみながら作って、保護者にも良さを浸透させたい
今のところ、職員間ではドキュメンテーションを活用できています。
これからは保護者の方にもっと、ドキュメンテーションの良さに気づいてもらいたいですね。
今はまだ記念写真のように捉えている方もいらっしゃるようなので、未満児の頃からドキュメンテーションを活用し、保護者の方々の感覚も変えていけたらいいなと思っています。
もう少し発行頻度が増えたら、保護者アンケートを取る予定です。
保護者参観日には、動くドキュメンテーションのスライドを作って保護者に見てもらうことも検討しています。
今、当園から他に2人の先生が往還型「ドキュメンテーション活用」コースに参加しています。
研修に参加した先生が増えていけば、さらに活用が進むかもしれないですね。
ドキュメンテーションには正解がありません。
とにかく作って、楽しく会話をしながら今後も活用していきたいと考えています。
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※本インタビューは『スマート保育園・幼稚園・こども園通信』2022年度4月号からの抜粋です。『スマート保育園・幼稚園・こども園通信』はルクミーをご利用中の園・施設様向けに毎月発刊している刊行物です。バックナンバーは、ルクミーをご契約頂いた園・施設さま・ルクミー みらい保育スクールへご参加頂けた方のみが閲覧出来る「ルクミールーム」内にてご覧いただけます。
※Web版とPDF版で編集の都合上、一部内容が異なる場合があります。
※記載内容はインタビュー当時の内容です。