「記念写真」より「記録写真」を意識。子どもたちの行事当日までの様子や発達を職員や保護者と共有できるように

社会福祉法人呉竹会・三茶こだま保育園の石田園長先生
導入前の課題
  • 保育者は、担任していない子どもの様子を把握するのが難しかった
  • 保護者に行事の準備の様子やプロセスをわかりやすく伝えるのが難しかった
導入後の成果
  • さまざまな職員の目線から子どもたちの様子を把握できるようになった
  • 写真によって会話が広がり、担任していない子どもの保護者との会話のきっかけが生まれた
  • 行事当日までのプロセスを保護者に見てもらえるようになった

「じりつ(自立・自律)」と「協力」を保育方針とされている社会福祉法人呉竹会・三茶こだま保育園の石田園長先生に、ICTの活用についてお話をうかがいました。

写真活用で園内のコミュニケーションを活性化

三茶こだま保育園さんでは、保育者が保育中に子どもの様子をたくさん語り合っている姿が印象的です。なぜこんなにも活発に語り合うことができるのでしょうか?

当園は2018年に創設されたばかりの新しい園なので、まずは保育者同士、経験に関係なく同じ視点で子どものことを語り合いたいという思いが強くあったのだと思います。
子どもの姿や子どもに関わることは、一番盛り上がる話題です。
それを語り合って共有することで、自然と子どもの発達や成長について気づきを得られます。
このような日常的な語り合いは、保育の質の向上に大変効果的です。

加えて当園では、保育中に撮った写真を会議で見せて、子どもたちの様子を共有する場を月1回設けています。
その会議では、クラスの保育者や看護師、栄養士などそれぞれの目線で子どもたちの写真を選び、参加者全員に説明するんです。
そうすると、参加している他の保育者から「これってこうだったよね」「こんなこともできるようになったんだね」といったコメントが出て、1枚の写真から驚くほど話が広がることもあります。

この「写真を活用したコミュニケーション」は、保育者と保護者の交流にも効果を発揮します。
たとえば、シフトの関係で担任ではない先生が保護者対応をするとき。
日常的な会話と保育者間の写真を活用した語り合いのおかげで、自身が担任していない子どもの状況もわかる部分が多く、保護者との会話のきっかけを作れるんです。

一円対話(話し合いの様子)

行事当日だけでなく、準備の様子も写真で共有できる

ルクミーの写真活用研修の受講を通して、園の中で変化はありましたか?

ドキュメンテーション作成の依頼をする前に、保育者自身が進んでドキュメンテーションを作ってくれるようになりました。
たとえば私が指示していなくても、「12月の発表会の企画制作に関わる子どもの姿」を題材としたドキュメンテーションを作成してくれたことがあります。
なぜ作ってくれたのか理由を訊ねると、「他の先生の話を聞いて作ってみたいと思っていたから」と楽しそうに語ってくれたんです。

実際のドキュメンテーション

写真を活用するなかで、どのようなメリットを感じますか?

行事当日までの子どもたちの様子を伝えられる点がいいですね。
行事での取り組みは、保護者の方に直接見ていただくことができますが、当日までの準備のプロセスの中にも、保育の伝えたい部分がたくさんあるんです。
そのため、さまざまな職員の目線から見た子どもの姿を、写真や動画でわかりやすく伝えられたらと思っています。

今回の発表会がその一例です。
一つひとつの演目が決まった背景も、意識的に伝えなければ保護者に伝わることはありません。
そこで、子どもたちの準備過程や発達の様子がわかる写真や動画、ドキュメンテーションを保護者の方に紹介してから、子どもたちの発表を見ていただくことにしました。
この取り組みは、保護者の方々から非常に好評だったんですよ。

(発表会)ピーステーブルで魔女と話し合い

記念写真より「記録写真」を意識

写真撮影のタイミングについて、決めていることはありますか?

何気ない日常の写真を撮影するようにしています。
実は「記念写真」はあまりなくて、どちらかといえば子どもの成長や保育を伝える「記録写真」を意識的にたくさん撮っているんです。
それに、保育者が子どもの性格や発達を把握していると、次の行動への予測ができ、写真や動画を撮るタイミングが見えてきます。
そして「次はこうなるかも」と予測をしながら撮影できるようになるんですよ。

クッキングの様子

ICTは「最初から全員が使えなくてもいい」意識が大切

日々の保育運営の中で、園長先生が意識されているマネジメントの工夫を教えてください。

悩んでいる保育者の助けになれそうなことがあれば、積極的に保育者同士の会話に入ってアドバイスするようにしています。
保育者にはそれぞれ、得意・不得意があるもの。
各保育者の得意な部分をどのような場面で活かしてあげられるか、と常に考えているんです。
どの職員も、行事や保育の現場以外でも活躍できる場があるといいなと思っています。

また語り合いの際に、あまり難しい言葉や言い回しは使わないようにしています。
誰にでもわかるような言葉で話すことで、楽しく語り合えるようにしたいんです。

最後に、ICTの導入を検討している全国の園へ、アドバイスをお願いします。

最初にICTを導入したときは、たしかに「難しいかも」と思うことがありました。
しかし、まず若い保育者がスムーズに使いこなして、保育者同士で教え合いながら全員が慣れていったんです。
使っていくうちに「こんな機能があるといいな」と思うようになるので、その都度調べながら使いっています。

保育者全員が最初からすべての機能を使える……というのは難しいものです。
何事も一歩一歩でいいのではないでしょうか。


本インタビューは『スマート保育園・幼稚園・こども園通信』2021年度1月号にも掲載されています。
こちらからPDF版をダウンロードいただけます。
※Web版とPDF版で編集の都合上、一部内容が異なる場合があります。
※記載内容はインタビュー当時の内容です。

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